何かから離れる時、人は途方もない力を使う。
今まであったものが無くなるという事実は、人間の本能の観点から考えても、中々に辛いことでもある。
なぜ、人間は無くなることを嫌うのかというと、このブログでも度々説明しているように「損失を嫌う」からである。
『いつか使うかな?』と絶対使いもしないような食玩を後生大事に捨てられずに取っておいたり。
「別れよう!」と決意した相手と話しているうちにうやむやになって別れられなくなったり。
これは全て、人間の「損失を嫌う」という本能によるものだ。
目の前にある捨てられない食玩も、目の前にいる別れようとしている恋人も、どちらも「情報」でしかない。
つまりおもちゃの形をした、恋人の形をした「情報」なのだ。
それはあなたの脳の中の「記憶」としてしっかりと格納されているわけである。
しっかりとスペースを取って書き込まれた情報がスッポりと無くなる。
この時に人は欠乏感を感じるようになる。
なぜなら、脳はそれらの情報が収まった状態で長らく「安定」していたにも関わらず、それを捨てるという選択に関しては「不安定」を感じるようになるからだ。
だから人間は、気持ちでは分かっていながらもどうしても前に踏み出せない生き物なのだ。
それほど、損失によって不安定をこうむることが危険なことだと本能に刻み込まれているからだ。
しかし、そのように深く本能に刻みこまれているにも関わらず、その安定を捨て、理想実現のために一歩踏み出そうとする人がいる。
その一歩は怖いかもしれない、危険があるかもしれない。
しかし私は常々お話しているが、対象から「離れる」ということは全く別の視点で物事を捉えることと同じなのである。
ずっと心に抱えていた悩みについて、間近で見続けていると結局は自分自身すら見失うことになる。
だから悩みを抱えたらひとまず、手放す、離れることをおすすめしている。
一度離れることで、ずっと悩んでいた事柄が随分小さく見えることがある。
これは錯覚ではなく、脳の機能による問題だ。
だから、何かから離れることは、物事を成し遂げるにあたって、新しいエネルギーを作り出すのだ。
またこうも考えることもできる。
「ファーストペンギン」という言葉を聞いたことはあるだろうか?
ペンギンの群れの中から、天敵がいるかもしれない海へ、餌を求めて最初に飛びこむ1羽のペンギンのことを指す語だ。
このペンギンは、人間と違って最悪「死ぬ」こともある。大きな損失だ。
しかし、その損失を理解し、現状に別れを告げることで、豊富な餌を最初に独り占めすることができる。
そして、実な危険かと思われたその海が、自分にとって新しいフィールドであることに気づくのだ。
このように、現状への別れは大きなエネルギーを消費するが、同じぐらい大きな「エネルギーを獲得する」ことになる。
先日の施術では、「恋人との別れ」についてご依頼いただいた。
この方も特に勘がよろしく、様々な施術についてもしっかりと効果をいただける方のお一人である。
そのためか、やはり一度決意はしたものの、いざその段になると「欠乏感」が顔出すのだ。
しかしこの方は、前述のとおり勘が鋭く、しっかりと未来を見据えている。
別れの先に理想となる未来があることを開眼されているからだ。
私としてはこの別れについて、ご依頼者様だけでなく、お相手にも新しいエネルギーを生み出せることを施術をして目の当たりにした。
双方にとって実りある第一歩になると確信している。